先日、ひょんなことから脳波をチェックする機会があった。どんな状態の時に、どのような脳波を出して対応しているのか分かるのだという。

　簡単な電極のようなものを頭に装着し、パソコンの前に座る。２０分ほどかける検査は、ゲームをしたり、千から７を引き算し続けたり、いきなり衝撃音を聴かされたり（ストレスや緊張を加えるため）、また、その一つ一つの間に、深呼吸をしたり、ポジティブなことを考えたりするというものだった。たった１分のゲームの間でも、勝ちたい、褒められたい、うまく見せたい、と自分の感情が頭の中を駆け巡るのがよく分かる。脳と心が深くつながっているのが感じられ、自分という人間が見えてかなり楽しいテストだった。

　脳波には、よく聞くアルファ波（リラックスしている状態）、シータ波（瞑想〈めいそう〉・集中）、そしてベータ波（日常・緊張）などがあり、脳波の出方によって、人はざっくり戦士型と不安型に分けることが出来るという。日本人のほとんどは不安型、つまり緊張時にドキドキするベータ波を多く出してしまうらしい。

　私は、思っていた通り戦士型だった。本番などの緊張やパニックに際して、ベータ波ではなくシータ波を出し、落ち着き、喜びへ持っていく。スポーツ選手やアーティストに適しているという診断だった。なるほど、だから本番前のワクワク感がたまらず、皆から不思議がられるのか……。

　しかし、その結果より興味深かったのは、楽しいことを思い出してくださいと指示された１分間だった。父や母や妹とともに小さな食卓を囲む幼い頃の私が、突然出てきた。それはまるで一枚の絵のように脳裏に浮かび、そこから映画のワンシーンのように動き始めた父が私に語り、若い母は穏やかに笑っている。私はとてつもない信頼感を持って２人を見ている。

　心をリラックスさせて、時々、脳の奥底にある記憶を呼びさますのもなかなかいいものだ。忘れかけていた幸せを、再び手にすることが出来るのだから。